2025年4月2日、ドナルド・トランプ大統領が広範囲にわたる新たな関税政策を発表したことを受け、世界の金融市場は大きな混乱に見舞われました。この発表は、貿易戦争への懸念を再び高め、投資家の間に広範な不確実性をもたらし、金融市場は即座に反応しました。

この記事では、この発表と、それに関連する要因が、近年まれに見る大規模な金融市場の急落にどのようにつながったのかを詳しく解説します。

キーポイント

• トランプ大統領の広範囲にわたる関税背策により、世界の市場で歴史的な売りが発生し、数兆ドルもの時価総額が失われました。
• 主要な株価指数は急落し、ナスダックは弱気相場入り、ダウ平均株価は記録的な連続下落を記録しました。
• 投資家は、金、債券、円などの安全資産に殺到し、暗号資産市場もまた急激な下落を見せました。

株価暴落を引き起こした要因 ^[1]

2025年4月2日、ドナルド・トランプ大統領は、4月5日から全ての輸入品に対して一律10%の関税を課す新たな関税政策を発表しました。さらに、対米貿易黒字の大きい国に対しては、より高い「相互関税」が設定されました。その内訳は、中国に対して34%、EUに対して20%、日本に対して24%です。この措置は、貿易の再均衡、米国産業の保護、そして外国企業に米国での製造を促すことを目的としていました。

この発表は、油断して準備が整っていなかった世界の投資家に衝撃を与え、貿易戦争再燃への懸念を高めました。関税の規模、適用速度、そして期間が不明確であったため、トレーダーは即座に反応し、市場は急落しました。この不確実性が株式市場の大規模な売りを引き起こし、世界の全ての市場に衝撃を与えました。しかし、4月9日、トランプ大統領は、発効からわずか13時間後に、75以上の貿易相手国に対して新たに課した関税を90日間停止すると発表し、これにより、基本の10%の関税のみが残され、アメリカの同盟国との緊張は一時的に緩和されました。

現在（4月14日）もトランプ大統領は関税について発言を続けており、市場に影響を与えています。

詳細は、トランプ大統領の相互関税についての記事をご覧ください。

株式市場の反応

世界の市場は広範囲にわたって下落し、投資家の心理は一気にリスクオフへと傾きました。貿易の混乱と経済の不確実性への懸念が、主要な株価指数全体にわたる大幅な売りを引き起こしました。

米国株式市場^［2,3,4］

2025年4月4日、トランプ大統領が広範囲にわたる関税措置を発表したことを受け、さらなる損失に備える投資家心理が働き、米国株式市場は急落しました。

• ダウ工業株30種平均：5.5%以上下落
• S&P 500：6%下落
• ナスダック100：5.8%下落

この急落は、前週末に記録的な2日間の大幅な市場の下落に続くものです。ダウ平均は初めて1,500ポイントを超える下落を連続で記録し、金曜日だけで2,231ポイント（5.5%相当）の暴落となりました。一方、S&P 500はわずか2日間で11%近く下落し、今世紀に入って3番目に大きな2日間の下げ幅を記録しました。ナスダックはピーク時から22%下落し、正式に弱気相場入りしました。

この売りにもかかわらず、ホワイトハウスは基本的な関税戦略を維持する姿勢を示しました。トランプ大統領は日曜日の夜にこの下落について言及し、「何も下落させたくはないが、時には何かを修正するために薬を飲まなければならない」[5]と述べました。政策転換が見られない中、市場は依然として神経質な状態にあり、高いボラティリティが続くと予想されます。

アジアの株式市場 ^[6,7,8]

4月7日の取引開始直後、アジア株は急落し、関税を巡る緊張とウォール街の大幅安をきっかけとした世界的な売りが広がりました。日経225は、取引開始直後に一時取引停止となるなど約9%下落し、終値は7.9%安の31,136.58円となりました。東証株価指数（TOPIX）も7.7%下落し、韓国のKOSPIは大幅な下落を受けて取引が一時中断されました。

日経平均株価は、12月の高値から20%以上下落し、正式に弱気相場入りしました。パニック売りは地域全体に広がり、香港のハンセン指数は取引終了までにほぼ12%急落しました。祝日明けに取引が再開された中国本土では、上海総合指数とCSI300が7%以上下落しました。

アジアの投資家心理は、世界的な貿易戦争の脅威の高まりによって大きく揺さぶられました。これらの国々は米国への輸出に非常に重点を置いているため、関税の影響は他地域よりも大きくなっています。これは非常に強い影響を示唆しており、関税の突然の引き上げと、報復措置の可能性に関する不確実性は、長期的な経済混乱への懸念を高めました。その結果、リスクセンチメントは急激に悪化し、アジア市場は近年まれに見る大幅な下落となりました。

ヨーロッパおよび英国市場 ^[9]

欧州市場は4月7日、大幅安で取引を開始し、トランプ大統領の関税政策が投資家の不安をあおり、前週からの急落が続きました。一時、ユーロ・ストックス50先物は6%以上下落し、直近2営業日ですでに8%下落していたところへ、さらに下げ幅を広げました。世界貿易への影響が大きいドイツのDAX指数は、取引開始直後に10%急落し、フランスのCAC40は6.6%、イタリアのFTSE MIBは5.7%下落しました。英国では、FTSE100が6%下落し、1年ぶりの安値となる7,566を記録しました。

VIX指数（恐怖指数） ^[10,11]

市場の予想変動率を示すCboeボラティリティ指数（VIX）は、4月4日に45.31まで急騰しました。これは2020年4月以来の高水準であり、その後4月7日にも再び上昇したものの、上げ幅は縮小しました。

ウォール街の「恐怖指数」とも呼ばれるVIXは、貿易戦争の激化への懸念から投資家の不安が高まるにつれて急上昇しました。専門家は、VIXが40を超えると、信用問題や金融危機の伝染といった、より広範なリスクに関連して市場に深刻なストレスがかかっている兆候だと指摘しています。

株式市場の損失額：11兆ドル超の衝撃 ^[12,13,14]

トランプ大統領の就任以降、米国株式市場は11兆1000億ドルもの価値を失い、特にテクノロジー株が大きな打撃を受けました。この記録的な損失の主な要因は、トランプ大統領が発表した関税政策です。投資家を驚かせたのは、その政策転換の急激さでした。市場は2025年の関税が緩やかに8.6%上昇することを想定していましたが、4月2日にトランプ大統領はこれをほぼ20%に引き上げました。

この予想外の発表はパニック売りを引き起こし、わずか2日間で米国株式市場から6兆6000億ドルが消失しました。これは、2日間における記録的な損失額です。特に、「マグニフィセント・セブン」（アップル、アマゾン、メタ、マイクロソフト、アルファベット、テスラ、エヌビディア）と呼ばれる主要なテクノロジー株は、わずか2回の取引で合計1兆8000億ドルの損失を計上しました。

• アップル：5330億ドル減
• テスラ：1390億ドル減
• エヌビディア：3930億ドル減
• メタ：2000億ドル減
• アマゾン：2650億ドル減
• マイクロソフト：1650億ドル減
• アルファベット：1390億ドル減

その他の資産への影響 ^{[15, 16, 17]}

株式市場が急落する中、投資家はリスクを抑え、資金を守るために、安全資産へと急速に動き出しました。市場にストレスがかかった際に安定的な資産と見なされることが多い日本円とスイスフランは、米ドルに対して3%以上も上昇しました。

一方、債券市場では需要が急増し、利回りは低下しました。米10年国債利回りは89ポイント下落して3.87%となり、日本の10年国債利回りも2024年12月以来の低水準となる1.05%まで低下しました。

金は、関税発表後の貿易摩擦激化、中央銀行からの強い需要、そして米ドルの弱体化に支えられ、過去最高値を更新しました。4月3日には史上最高値となる3,167.57ドルを記録し、安全資産に対する投資家の需要の高まりを示しました。

しかし、4月7日までにスポット価格は1.9%下落し、1オンスあたり2,981.09ドルと3月13日以来の低水準となりました。この動きを受け、一部のアナリストは、金が短期的に買われ過ぎている可能性があると警鐘を鳴らしています。

この売りは暗号資産にも広がり、ビットコインは関税発表以来12%下落し、74,700ドルの安値をつけました。暗号資産市場も時価総額の9%を失い、投資家がリスクの高い資産から資金を引き揚げました。イーサリアム、XRP、ソラナなどの主要なアルトコインも7%から10%の損失を記録し、リスク回避の動きが広範囲に及んでいることを明確に示しました。

今後の市場の見通し

FX

トランプ大統領が関税政策を撤回する兆しが見られない場合、リスクオフの局面においては、安全資産とされる通貨、特に経常収支が黒字である国（つまり、海外からの資本に依存していない国）の通貨への需要が引き続き強まるでしょう。不確実性が和らぐまでは、円とスイスフランが相対的に堅調な動きを示すと予想されます。

一方、新興国通貨や、豪ドルやNZドルといった通貨は、この環境下では厳しい状況に置かれるでしょう。ドルは、市場が米国の消費者への悪影響に注目するため、弱い立場にあります。投資家がドル買いに動くのは、深刻な市場の混乱が発生した場合、または不確実性が緩和し、最近のドル売りが反転した場合に限られると考えられます。

コモディティ

原油、金属、農産物といったコモディティ全般が下落しています。特に原油は、OPECプラスが5月に予想を上回る増産を決定したことが、価格の急激な下落を加速させています。この大幅な価格下落は、米国内の掘削活動が急速に減速する可能性が高いことを示唆しています。

金は最近、投資家が他の分野での損失を補填するために売られていますが、各国中央銀行による根強い購入意欲は依然として存在すると見られています。より広範な商品市場における売り圧力の大きさは、世界経済の成長鈍化と景気後退への懸念が高まる中で、市場が大幅な需要の落ち込みをすでに織り込んでいることを示唆しています。今後の展開は、関税による報復措置、そして景気後退と需要の懸念を緩和するような交渉結果に大きく左右されるでしょう。

債券

関税は物価を押し上げ、それによって米国債の利回りは上昇するはずです。しかし、当初市場は米国経済への潜在的な成長鈍化の影響に注目しました。現在では、今年の利下げ幅を、解放記念日以前の約3回から約4回（各25bp）と見込んでおり、5月には最初の利下げが行われる可能性が50%となっています^[18]。

私たちは常に、個人消費が経済の70%を占めており、その活動が停滞すれば、雇用と経済の見通しに必然的な影響が出ることを念頭に置いています。しかし、もしインフレが再び勢いを増せば、金利がより長く高止まりすると予測されるため、債券価格は下落し、利回りは上昇するでしょう。また、投資家が「米国売り」の姿勢を取り、米国債を売却するようになれば、利回りはさらに上昇する可能性があり、危惧すべき展開となるでしょう。

指数

投資家は、関税の規模が予想外に大きかったことと、潜在的な貿易戦争への懸念から、株式を大幅に売却しました。発表週の金曜日には、明確なリスク回避の動きが見られ、ポジションの急激な調整が行われました。さらに、翌週月曜日のアジアおよび欧州市場の取引開始時には、強制決済が多発し、極めて過剰な値動きとなりました。

トランプ政権による関税に関する何らかの猶予や延期がないか、投資家が注視しているため、「見出しによる混乱」が市場心理に影響を与え続けています。一部の市場関係者は、S&P 500の史上最高値（4,915）からの20%の調整が政策対応を引き起こす可能性があると推測していますが、これは依然として不確実です。また、4,850という水準は、長期的なテクニカルサポートが生じる潜在的な数字として注目されています。市場今後の決算発表シーズンを注視し、特に企業の業績見通しや進行中の貿易摩擦の影響に注目するでしょう。

一部のアナリストは、財政支出が特定のセクターに影響を与える可能性を考慮すると、最近の米国市場の売り越し後、ヨーロッパ市場はより魅力的に見えるかもしれないと指摘しています。株式の評価額は低下しており、過去10年間の安値圏をわずかに上回る水準にあるものの、その動きは比較的小幅にとどまっています。しかし、より広範な構造的変化が起こっている場合、特に今後の企業収益が進行中の貿易と関税の動向によって圧迫されるならば、さらなる下落の可能性も否定できません。

荒れる市場下での取引：不確実な状況下での売り

2025年4月の市場暴落は、突発的な政策変更に対する世界の金融市場の脆弱性と深い相互連関性を浮き彫りにしました。急激な売りは数兆ドル相当の株式市場の価値を消失させ、米国の貿易政策の転換が世界的な大惨事を引き起こしたことを示しました。

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よくある質問

景気は後退していますか?

2025年4月7日現在、米国の景気は公式には後退していません。しかし、エコノミストや金融機関の間で景気後退の可能性に対する懸念が高まっています。

J.P.モルガンは、米国と世界の景気後退の確率を従来の40%から60%に引き上げました^[19]。同様に、ゴールドマン・サックスも米国の景気後退の可能性を45%に引き上げています^[20]。これらの予測はリスクの高まりを示唆していますが、一般的に景気後退は2四半期連続のGDPマイナス成長によって定義されるため、現時点ではまだ景気後退とは言えません。

市場は暴落していますか？^[21]

関税発表後、株式市場は急激かつ急速な下落を経験しています。発表週の木曜日と金曜日だけで、ダウ工業株30種平均は合計3,910ポイント下落し、2日連続で1,500ポイント以上下落したのは史上初です。金曜日の5.5%の下落は、2020年6月の新型コロナウイルス感染症のパンデミック以来、ダウにとって最悪の落ち込みとなりました。

S&P 500は金曜日に5.97%、木曜日に4.84%下落し、2日間の合計下落率はほぼ11%となり、最近の高値から17%以上下落しました。一方、ナスダック総合指数は両日ともほぼ6%下落し、12月のピークから22%下落し、正式に弱気相場入りしました。

これらの急激な下落は懸念されるものの、それが完全な市場の暴落となるかどうかは、その後の市場の動向とより広範な経済指標によって決まります。

参照