サーキットブレーカーとは？：市場変動時の取引停止について

トランプ大統領の貿易関税に起因する市場のボラティリティを受け、日本と台湾は大量の売りを防ぐためにサーキットブレーカーを発動しました。この措置は注目を集めていますが、サーキットブレーカーという考え方自体は決して新しいものではありません。

サーキットブレーカーや取引停止は、長年にわたり世界の株式市場に組み込まれており、市場が大きく変動する局面において、パニック売りの抑制や投資家心理の安定化に重要な役割を果たしてきました。

これらの仕組みがどのように機能し、市場にどのような影響を与えるかを理解することは、投資家やトレーダーがより効果的に市場の変動に対応する上で役立ちます。

キーポイント

• サーキットブレーカーは、極端な市場変動時に一時的に取引を停止することで、市場の安定に貢献します。短期間での急激な価格変動によって発動され、投資家やトレーダーに再評価の時間を与え、パニック売りによる急落を防ぐことを目的としています。
• 日本と台湾は最近、米国の関税を巡る緊張に関連した急激な株価下落の後、サーキットブレーカーを発動しました。これにより、無秩序な市場の動きを抑制し、さらなる損失を限定するのに役立ちました。
• 1987年以来、サーキットブレーカーは現代の市場インフラの重要な一部となっています。2016年の中国市場のボラティリティや2020年の新型コロナウイルス感染症による株価暴落といった主要な危機において、その有効性が示されています。

サーキットブレーカーとは？

サーキットブレーカーとは、価格が短期間に急激に変動した場合に、取引を一時的に停止させるために市場に組み込まれた仕組みのことです。パニック売りや過熱した買いを防ぐことを目的としており、株価指数や個別の証券が事前に設定されたしきい値に達すると発動します。

世界中の取引所で使用されているこれらの市場メカニズムは、極端な価格変動が発生した際に市場の秩序を回復し、市場参加者に取引再開前に状況を再評価する時間を与える役割を果たします。

サーキットブレーカーの種類

サーキットブレーカーには、一般的に以下の2種類があります。

1. 市場全体のサーキットブレーカー（MWCBs）

これらは、日経225、S&P500、ハンセン指数といった主要な株価指数に適用され、取引時間中に指数が一定の割合で下落した場合に発動します。米国では、市場全体のサーキットブレーカーは3つのレベルで運用されています^[1]。

レベル	発動条件	対応措置
レベル1	7%下落	15分間の取引停止
レベル2	13%下落	15分間の取引停止
レベル3	20%下落	その日の取引終了まで停止

2. 個別銘柄の一時取引停止（Single-Stock Halts）

これは、個々の株式が短時間のうちに特定の割合を超えて変動した場合に発生します。一部の取引所では、特に先物や商品市場において、価格変動の上限と下限を定める値幅制限（limit-up/limit-down rules）も導入されています。

例えば、2020年3月には、テスラ（TSLA）の株価が1日で10%以上下落したため、個別銘柄のサーキットブレーカーが発動し、一時的に取引が停止されました^[2]。

関税ショックと取引停止：アジア市場への影響 ^[3]

4月7日、トランプ大統領による関税政策への懸念が投資家心理を揺るがし、アジアの株式市場は軒並み急落しました。

日本では、日経225先物が8%以上も急落した後、10分間の取引停止措置が取られました。この措置は東京証券取引所の株式取引に直接的な影響はなかったものの、初期のパニック的な動きを鎮静化するのに役立ちました。日経225は一時9%近くまで下落しましたが、その後値を持ち直し、最終的には6.5%安で取引を終えています。

台湾の株式市場も同様の混乱に見舞われ、台湾加権指数（Taiex）は取引開始直後に9.8%下落し、1年以上の間で最大の下げ幅となりました。この急激な売りは、世界の市場がすでに数兆ドルの価値を失っていた長い週末明けに起こりました。これに対し、証券取引所運営者は市場の安定化を図るため、サーキットブレーカーを発動しました。

H2 – サーキットブレーカーの歴史

サーキットブレーカーの発動につながった主な歴史的出来事は以下の通りです。

1987年 ブラックマンデー：サーキットブレーカーの起源 ^[4]

1987年10月19日、米国の株式市場は史上最大の1日での下落率を記録しました。

ダウ工業株30種平均は1回の取引で22.6%もの急落を見せ、市場のインフラと投資家の行動におけるもろさを露呈させました。

現在「ブラックマンデー」として知られるこの株価大暴落には、単一の原因はなく、プログラム取引、株価の過大評価への懸念、そして広範囲にわたるパニック売りが複合的に影響したと考えられています。これに対し、規制当局は市場の安定性を高めるための広範な改革の一環として、最初のサーキットブレーカーを導入しました。

2016年 中国：政策主導のボラティリティ ^[5]

中国は、激しい市場変動を抑制する目的で、2016年初頭にサーキットブレーカー制度を導入しましたが、その導入は裏目に出る結果となりました。

CSI 300指数が1月4日と7日にそれぞれ7%の下落を見せた後、サーキットブレーカーによって取引が停止されました。わずか数日の間に起こった頻繁な取引停止は、市場を落ち着かせるどころか、パニック売りの動きを加速させました。投資家が、さらなる取引停止が起こる前に売却を急いだためと言われています。

そのため、導入からわずか4日後、規制当局は意図しない結果と高まる懸念を理由に、サーキットブレーカー制度を廃止しました。

2020年3月：COVID-19による市場の混乱 ^[6]

COVID-19パンデミックの初期において、世界の市場はかつてないほどの不確実性と変動に見舞われました。米国では、S&P500指数が3月だけで4度（3月9日、12日、16日、18日）も市場全体のサーキットブレーカーを発動しました。

毎回、指数は取引開始直後に7%下落し、悪化する健康状況、ロックダウンの発表、経済封鎖への懸念によるパニック売りに歯止めをかけるため、自動的に15分間の取引が停止されました。

これらの取引停止は、より広範な市場の下落を防ぐことはできませんでしたが、極めて不安定な時期に、投資家が新たな情報を整理し、戦略を再考する機会を与えることにはなりました。

まとめ：サーキットブレーカーと取引停止について

サーキットブレーカーとそれに伴う取引停止は、変動の激しい金融市場を安定させるための重要な安全装置として機能します。

最近の関税による市場の変動への対応や、日本や台湾の事例に見られるように、これらの仕組みは損失を防ぐことを目的としたものではなく、市場が情報を吸収し、再調整するための重要な一時的な停止措置となるものです。

その有効性は、発動のタイミング、制度設計、そして実際の運用に左右されますが、サーキットブレーカーはリスクを軽減し、極度の市場ストレス下において投資家の信頼を維持する上で、実績のある仕組みとなっています。

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参照